[wINGS]

真紀
「・・・貴之・・・降ろして」

貴之
「・・・真紀」

どうやら真紀は冷静さを取り戻したようだ。

なゆさんの死体を見て錯乱して、サキコさんの死体を見て冷静になるとは・・・

異常な空間だ・・・

ここで起こる全てが異常だった。

 

真紀
「これで、残るはラムダくんと私達だけね・・・」

 

真紀の後ろからラムダくんが現れた。

 

ラムダくんは泣いていた。

 

左手にはナイフが握られていた。

 

らむだ
「おみが・・・」

 

FAR
「!!」

 

私は忘れていた・・・

おみくろんくんの死体も消えてしまっているのだ!

ということは、やはり犯人はあの人物しか居ないという事になる。

 

らむだ
「おみが・・・おみの首が・・・」

 

良く見るとラムダくんの両手が抱え込んでいるのはおみくろんくんの首だった。

 

真紀がラムダくんに近づく・・・

 

真紀
「ラムダくん・・・」

 

真紀は放心状態のラムダくんをそっと抱きかかえた。

 

ラムダくんの手からそっと真紀はナイフを取った。

 

そして、こちらを見る。

 

真紀
「言ったでしょう?」

 

貴之
「?」

 

真紀
「私はあなたを守るの・・・」

 

貴之
「よせっ!違うんだ!!!」

 

そう言った時、既にナイフは柄だけ残してラムダくんの胸に吸い込まれていた。

 

真紀の全身が真っ赤に染まる。

 

ラムダくんは虚ろなまま倒れこむ。

 

らむだ
「おみ・・・おみ・・・」

 

らむだくんは転げ落ちたおみくろんくんの首を取ろうとするが、
あと数センチの所で完全に活動は停止した。

 

貴之
「真紀ーっ!」

 

こちらを向く真紀は笑いながらまたつぶやいた。

 

真紀
「わたしが・・・守るの・・・」

 

私は真紀に近づいていく・・・

 

真紀はナイフを持って立ち尽くしていた。

 

私は真紀を抱きしめる。

 

今の真紀の状態なら私を刺してもおかしくないだろう。

 

だが、私に出来ることはこれしか無かった。

 

もう、この屋敷には二人しかいない・・・

 

しかし、真紀が夜の蝶でない事は確信があった。

 

私は真紀を連れて外に出た。

 

行けるとこまで行こう・・・


[lAST cARESS]

外に出ると炎は消えていた。

いつのまにか雨が降っている・・・

真紀はへらへらと笑っていた。

貴之
「行こう・・・」

私は真紀の手を引いて歩き出した・・・

舗装されていない道路を歩く・・・

二人の返り血は雨が洗い流してくれる・・・

一時間ほど歩いたところで何かが爆発するような音が聞こえた。

 

更に30分ほど歩くと、前の道が土砂に埋もれていた。

 

貴之
「俺達を帰さないつもりか・・・夜の蝶・・・」

 

私は座りこもうとする真紀を無理やり立たせて山に入った。

 

なんとかこの土砂を迂回しなければならない・・・

 

真紀を連れて山を登るのは非常に大変だった。

 

しかも真っ暗だ・・・

 

水の音が聞こえる・・・

 

川があるのか?

 

森を抜けると滝があった・・・

 

だめだ・・・また迂回するしか・・・

 

ドンッ

 

其の時、背中を押されて私はつんのめる。

 

後ろを振り向くと真紀が誰かに羽交い締めにされている。

 

真紀の首筋にナイフがキラリと光っていた。

 

夜の蝶
「非常に惜しーねー」

 

FAR
「やはり、おまえか?」

 

夜の蝶
「ん?わかってたの?」

 

FAR
「何故、みんなを殺した!」

 

夜の蝶
「怖い顔しないでよ、ゲームだよ。げ・え・む」

 

FAR
「ゲームだと?」

 

夜の蝶
「そだよ!この中で一番賢そうなFARさんと勝負したかったんだ!」

 

FAR
「ふざけるな!」

 

夜の蝶
「ふざけてなんか無いって、あんたの彼女だってラムダくんを殺したジャン!」

 

FAR
「このやろう!」

 

夜の蝶
「おっと!それ以上近づくなよ!
最後はお前だけど、まだOKABAさんが死んでないんだから。
OKABAさんを見殺しにするの?」

 

FAR
「お前は狂ってやがる!」

 

夜の蝶
「それにしても酷いねぇ。あんたの彼女は!
なんの罪もないラムダくんころしちゃうんだもん!」

 

其の時、大きな雷と共に夜の蝶の顔が映し出された。

 

やはりそれは爆発に巻き込まれたはずのNEZくんの顔だった。

 

NEZ
「それにしても、良くわかったね!」

 

FAR
「・・・」

 

NEZ
「なんなら解答を聞いてあげるよ。
言ってみな!」

 

FAR
「・・・」

 

NEZ
「早くいえよコラ!」

 

真紀の首筋から赤い物が流れはじめた。

 

FAR
「・・・おまえは・・・アイヤッパンだ」

 

其の時、夜の蝶の体が一瞬ピクリと動いた。

 

夜の蝶
「それは面白い見解だ!
何故、そう思った?」

 

FAR
「全ては・・・全ては計画されていたんだ・・・
東海メンバーに・・・」

 

夜の蝶
「・・・」

 

FAR
「真紀が・・・真紀がこう言ったんだ・・・

『みんな殺人なんかできっこない人よ!』って・・

私はそれにこう返した。

『初めて逢ったのに何故わかる?』と・・

そう、初めて逢う人の事を信じてはいけない。

その人が本当にその人なのか?

そもそも、夜の蝶は存在しない物・・・

そこに決定的な解れの鍵があると思った。

そこで私はこう思った。

これは初めて逢う人間の確認が出来ない事を利用した巧みな殺人だと・・・

 

まず、アイヤッパンさんの、いや本物のNEZくんの死体がどうやって移動したか?
それは全員不可能な事だった・・・
只一人・・・本物のNEZくんを除いては。

つまり、NEZくんは屋根の上では死んでいなかった。
私達が屋根の上に行くまでにNEZくんは風呂場へ移動したのだろう。
そしてNEZくん・・・つまり、アイヤッパンさん、あなたに殺された・・・

屋根の下に居るはずのみんなが移動したわけは、
やはり東海メンバーに部屋に入るように言われたからだ

東海メンバーはおそらく私達を引っ掛けてやろうと思って
NEZくんをアイヤッパンさんと言い、
アイヤッパンさんをNEZくんと言って
関東メンバーを騙すつもりだったのだろう。

それがこの連続殺人事件に荷担する事になるとも知らず、
自分達が殺される事も知らずに・・

アイヤッパンさんがこういう冗談が好きなのは誰でも知っていることだ。
多分殺人事件も東海メンバーのドッキリだったのだろう。

ラムダくんがアイヤッパンさんの悪戯だってって言った時、
私もそんな気がした。

しかし、東海メンバーは、中でも璃音さんのお母さんは冷静そのものだった。

恐らく、このような悪質な冗談に荷担する気があまり無かったに違いない。

私がNEZくんの正体を怪しいと思ったのは、
おみくろんくんがトイレに行きたいと言った時の事を思い出したからだ。

あなたが『食堂の隣の道の突き当たりだよ』と言った後、

『案外トイレでしょ。オレも行って見てくるよ。
ちょうどオレもしたかったんだ。今朝から一回も出してない。』

とあなたは言った。

一度もここに来ていないあなたがトイレの場所を知っているわけがない。

しかし、それは推測に過ぎなかった。

其の時は只の違和感でしかなかった。

そして、あなたはおみくろんくんと一緒に風呂場へ行く。

其の時に、おみくろんくんもそそのかしたのだろう。

おみくろんくんは風呂場へ行かずに屋根の上で次の死体の役をするために、
蝶の絵を描いていた。

そして、あなたは風呂場でNEZくんを殺した。

風呂場の蝶の絵はあらかじめ描かれていたのだろう。

それを出来るのもアイヤッパンさんだけだ。

あなたが私と神生さんを呼びに来た時もウインクを一つすれば、
東海メンバーにはそれがドッキリの延長だと思い込ませる事は出来る。
もしかしたらそのドッキリも事前に組まれていたのかもしれない。

おみくろんくんが死んだと報せた時の璃音さんのお母さんの非難の目は、
私に対するものではなく、この悪質なドッキリに対するものだった。

もちろん、ヒラニヤガルバのパスワードもアイヤッパンさんしか知らないはずだ。

しかし、アイヤッパンさんが死んでいるという事実がお互いを疑惑に導いた。

神生さんは疑惑を引き出すための演技をしていたんだ。

あなたと神生さんは私を外へ連れ出した。

その間にあなたの奥さんは血を吐き出す。

それもすべて仕組まれた事だった。

私がアイヤ@嫁さんを調べた時に璃音さんのお母さんが異常に怯えた。

それは私がこう言ったからだ。

だめだ・・・死んでる・・・と。

その時まで全て演技と思っていたが本当に死んでいることがわかったのだろう。

其の時、理性は崩れ去り、子供を守ろうとする本能が、
その場を去ることをお母さんに命じた。

私は死んだ筈のアイヤ@嫁さんが血を流しているのを見た。

毒を飲んだ人間が死んでから血を流すのはやはりありえない・・・

アイヤ@嫁さんが血を吐いてから、アイヤ@嫁さんに触ったのはあなただけだ。

其の時に殺したのだろう。

まさか自分の旦那に殺されるとは夢にも思わなかっただろう。

もしかしたら璃音さんのお母さんは
アイヤ@嫁さんが刺されているのを見たから怯えたのかもしれない。

もちろんなゆさんも演技だった。

あなたが追いかけてくるのを知っていたんだ。

そして、あなたに殺された。

そして、どこかで落ち合う約束をしていたおみくろんくんを殺し首を切断した。

あなたは私達が逃げないように車のキーを奪い、今度は自分を殺す準備をしはじめた。

風呂場のNEZくんの死体を車に運んだんだ。

それはサキコさんに見つけさせるためだった。

サキコさんが遅れてくる事を知っていたあなたは、
それを利用して自分の死体の目撃者を作る事に成功した。

ここで巧妙だったのは本物のNEZくんの死体を見たのがサキコさんという点だ。

まさか、サキコさんが嘘を言うわけはないから
死体さえ始末すればあなたは死んだ事になる。

車を爆発させればあなたはこの世に存在しなくなる。

つまり、存在しない殺戮者の誕生だ。

車の鍵をあなたが持っていってから大分時間があったのはその準備のためだ。

もちろん、いつでもサキコさんを殺せるようにボウガンで狙いをつけたままで。

そして、あらかじめ殺しておいた神生さんを使って恐怖を真紀に植え付ける。

多分、これは車の鍵を取りに来た時に真紀の怯えようをみて思いついたのだろう。

案の定、真紀はラムダくんを刺した。

これが、オレの推理だ。

・・・満足か?」

 

アイヤッパン
「ちょっと不満ですね」

 

FAR
「?」

 

アイヤッパン
「だいたいは正解で〜す。37点」

 

アイヤッパン
「うそうそ、80点はあげれるなぁ」

 

FAR
「・・・」

 

アイヤッパン
「あのさぁ、自分が死ぬのとOKABAさんが死ぬのとどっちがいい?」

 

FAR
「・・・」

 

アイヤッパン
「決めさしてあげるよ」

 

FAR
「真紀を・・・真紀を助けてやってくれ」

 

アイヤッパン
「ひゅぅ」

 

アイヤッパン
「じゃあさぁ、後ろ向いてくれる?」

 

FAR
「本当に真紀を助けてくれるんだな?」

 

アイヤッパン
「早くしないと気が変わっちゃうかもよ。OKABAさんは気が狂ってるけど。ぷぷぷ」

 

私は後ろを向いた・・・

 

アイヤッパンさんは私を殺したあとに真紀を殺すだろう。

 

わかっていながらも私は後ろを向いた。

 

私は精一杯やったんだ。

 

 

アイヤッパン
「バイバイベイベェ」

 

 

其の時、真紀が叫んだ!

 

真紀
「意気地なし!自分の気持ちが満足できればそれでいいの?
私はイヤ!
このままアイヤッパンに殺されるくらいなら自分から死んでやる!
でも、あなたがまだ私を愛しているのなら、
あなたが私を殺して!」

 

アイヤッパン
「うるせーよ!バーカ!」

 

後ろで殴られる音がする。

 

真紀
「私を・・殺して・・このバカを・・・ぶん殴ってよ!!」

 

貴之
「うおおおおお!」

 

私は振り返りアイヤッパンに突進した。

 

サクッ

 

私の脇腹にナイフが刺さる。

 

それでも私は突進を止めなかった。

 

アイヤッパン
「おい!やめろって!」

 

サクッ

 

サクッ

 

サクッ

 

FAR
「なあ・・・アイヤッパンさん・・・」

 

アイヤッパン
「なんだよ」

 

FAR
「蝶は・・・夜、飛べないんだろ?」

 

私は力任せにアイヤッパンを突き飛ばした。

 

ドンッ

 

フッとアイヤッパンの顔がぶれる。

 

驚愕の表情に包まれたままアイヤッパンは崖に落ちていく。

 

倒れこみながら私は滝壷を見下ろした。

 

30mはある崖下でアイヤッパンは血の羽根をつけて横たわっていた。

 

貴之
「地獄へ・・・堕ちろ・・」

 

私はまだ腹に刺さっているナイフを投げ捨てて真紀に近づいた。

 

真紀は私を見て言った。

 

真紀
「私も地獄に落ちるのかな?」

 

貴之
「・・・」

 

真紀
「なぜ、私を殺してくれなかったの?」

 

貴之
「罪は償えばイイ」

 

真紀
「・・・そうね」

 

私達は抱き合った。

 

お互いの体温を確かめ合った。

 

真紀
「私は・・・エゴの塊なの・・・」

貴之
「・・・」

真紀
「さっきはあなたに意気地なしって言ったけど・・・
わかっちゃった。
私よりもあなたの方が勇気があるわ」

私はこの言葉を誤解した。

真紀
「私は背負えないし、あなたには背負っててもらうかもしれない。」

真紀
「でも・・・いいえ・・・だから・・・」

 

貴之
「・・・?」

 

真紀
「さようなら」

 

真紀の体は私の体温ごと腕から抜けて行った。

 

真紀
「私が消えれば楽になるでしょう?」

 

私が近づくとトンッという音と共に真紀のからだが一瞬宙に浮いた。

 

貴之
「真紀ーーーーーーーーーっ!!」

 

視界から消え去るまで真紀は笑っていた。

 

貴之
「ま・・・き・・・・」

 

一人きりになった森の中で私は蝶を見たような気がした。


[ePILOGUE]

送信者:リオン 2001/10/27 16:04

宛先:far@fm.cool.ne.jp

件名:お元気ですか?

 

こんにちわ。

璃音の母です。

もう、あの事件から2ヶ月以上の月日が経ちました。

マスコミもやっとなりを潜めてきたようです。

私達が地下室で発見された時、全員殺されたものと思いました。

でも、FARさんが生きててくれて嬉しいです。

只、哀しい事件には違いないでしょうが・・・

翌日の事件報道でアイヤッパンさんの動機が快楽殺人と報道されていましたが、私には納得できませんでした。

私はアイヤッパンさんとFARさんがチャットをしているのを後ろで見てました。

なぜ、アイヤッパンさんは私を殺さなかったのでしょう?

快楽殺人なら私も殺されているはずです。

アイヤッパンさんの本当の動機はなんなんでしょう?

FARさんに言ったゲームという言葉も納得できません。

もう、いいですね。

こんな話は・・・

早く良くなることを祈ってます。

ではまた。


 

送信者:FAR  2001/10/28 00:34

宛先:rion@jasmine.ocn.ne.jp

件名:Re;お元気ですか?

 

こんばんわ。

メールありがとうございます。

アイヤッパンさんは多分、自殺じゃないかと思います。

というより心中ですね。

アイヤッパンさんの旅館が倒産していたのを知りました。

オフ会以前にアイヤッパンさんは娘のみずはちゃんを親戚に預けていたみたいです。

おそらく、娘を殺すのは忍びなく、またそれゆえに璃音さんとお母さんを見てオーバーラップしたからお二人を殺せなかったんだと思います。

もちろん、推測にしか過ぎませんが・・・

この事実があって私はアイヤッパンさんの言った私の解答が80点だという意味が解りました。

アイヤ@嫁さんが殺された時に、私は、何故叫ばなかったかを考えませんでした。

それは、アイヤ@嫁さんは既に死んでたからです。

きっと、毒薬は本物だったのでしょう。

アイヤッパンさんはそうと知らずにさらにアイヤ@嫁さんを刺したのでしょう。

結局、アイヤ@嫁さんは全て知っていて計画に荷担したんですね・・・

哀しい話です。

私は子供が生まれたらそんな自分勝手なエゴを押しつけたりはしたくありません。

でも、人間の精神だけは永遠の謎ですね。

それと、OKABAさんですが意識は取り戻しましたが記憶喪失になっていました。

それはそれで良かったのかもしれませんが、今は二度とこのような悲劇が繰り返さない事を祈るのみです。

また、メールします。


 

 

2008年5月26日

二次元歌劇ホームページより抜粋

 

皆さん!

来る8月10日に毒電波同盟の第一回全国オフ会を開催する事が決定しました!

主催者は私、FARと嫁のOKABAです!

なんと、一軒家を貸しきり、どんちゃん騒ぎをする予定!

みなさん、振るって参加して下さい。

なお、記念すべき第一回オフ会タイトルは毒電波蝶々に決定しました!

詳しくは掲示板にて


bUTTERFRY pARANOIA

作 アイヤッパン


アトガキ

私はこの小説をアラが多い作品だと思っていますが、妥協した作品ではなく、しかも、初めて他人に見せる事を前提とした作品であり、また見る側の人間も限定されているという珍しいケースでありますが、非常に楽しく書くことが出来ました。
蜘蛛の巣上の愛すべき友人達にも娯楽として楽しんでいただける事を祈ってます。

読み終わってから「なんだ!やっぱり犯人はアイヤッパンかぁ!」って言った人達は勝ち誇ってください。

この物語の登場人物と
現実世界の登場人物と
貴之と真紀と
神話同盟に
偽りの憎しみと
おびただしいほどのキスと
果てしない蝶を込めて。

アイヤッパン@夜の蝶