[mAYFLY]
FAR
「とにかく、なゆさんとらむだくんを探しに行こう」
OKABA
「・・・そうね」
立ちあがろうとした其の時、窓の外を何かがよぎった。
神生さんではない。
その何かは上から降ってきたのだ。
FAR
「・・・離れるな!」
私は、真紀にそう言って、
汗ばむ手で震える真紀の手を掴むと窓の方に歩いていった。
OKABA
「ひっ!」
FAR
「見るな!」
とっさに真紀の前に立ちふさがる。
なゆさんだった
首は仰向けになっているが体はうつぶせだった。
左足のつま先が天を仰いでいる。
妙にねじくれた腕が糸が切れてしまったパペットを想像させた。
OKABA
「うあう・・・うお・・・」
貴之
「真紀!しっかりしろ!」
OKABA
「ひっ!」
完全に錯乱状態に陥っている。
私の手を振り払って真紀は部屋の外に走り出そうとした。
しかし、真紀は立ち止まってドアを睨んだ。
私も気付いた。
誰かが走ってくる。
真紀はその場にへたり込み、ドアから後じさろうとするが、
うまくいかずにその場で床を撫でているように見えた。
足音は部屋の前でゆっくりになり恐る恐るその人物は現れた。
FAR
「NEZくん!」
私は、NEZくんを不審に思いながらも近づこうとした。
NEZ
「寄るな!!」
OKABA
「!!!」
NEZくんはボウガンを手に持っていた。
こちらを向けている。
FAR
「な、なぜ!?」
OKABA
「ひっ・・・!ひやっ・・!」
FAR
「NEZくん・・君が・・夜の蝶なのか・・?」
NEZ
「しらばっくれるな!」
FAR
「そのボウガンを下げてくれ・・・」
NEZ
「だまれ!」
真紀はがくがく震えている。
意味不明な言葉が真紀の口から漏れている。
NEZ
「下手な芝居はやめろ!」
真紀は狂ったように首を振っている。
真紀がこれほどまでにショックを受けるとは思わなかった私は少し意外だった。
FAR
「たのむ・・・ボウガンをおろしてくれ。」
NEZ
「もう誰も信じれない。だからわかってくれ。」
NEZくんはボウガンを下ろそうとはしなかった。
ボウガンは一直線に私を狙っていた。
FAR
「・・・わかった。」
NEZ
「これからオレはここを出る。
ここまでは一本道だから途中でサキコにも逢えるはずだ。
もし、もし、あなた達が夜の蝶じゃなかったら、
オレは・・・脱出できる事を願っている」
FAR
「・・・ありがとう」
NEZくんの勝手な言い分はとても良く理解できた。
さっきまでの自分と同じだからだ。
NEZくんはボウガンの狙いを真紀に移した。
NEZ
「OKABAさん・・・
すまないが、アイヤ@嫁さんの服に車のキーがあるかもしれない。
取ってくれないか?」
真紀はがくがく震えている。
NEZ
「はやくしろっ!!」
OKABA
「はひぃ・・」
真紀は四つん這いのままアイヤ@嫁さんの死体に近づいた。
ん?たしか、アイヤ@嫁さんは毒殺されたんじゃなかったか?
血のしみが広がっている。
完全に死んでから吐血するというのはありえるのだろうか?
貴之
「まってくれ!オレが取る!」
NEZ
「だめだ!そのまま窓から逃げないと言う保証はない」
真紀は泣きながら私を見つめている。
呼吸すらままならないのだろうか?
ヒックヒックとしゃくりあげる音が私の心音をも加速させて行く。
NEZ
「どうだ?あったか?」
遠目からでも震えがわかる真紀の手には車のキーが握られていた。
NEZ
「それをこっちによこせ!」
NEZくんは今度は私にボウガンを向け
視界に私も真紀も入るように大回りに真紀に近づいていく。
NEZ
「こんなことはしたくなかった・・・」
NEZくんは真紀から鍵をひったくると
ボウガンの狙いはそのままにドアの方へ近づいていく。
NEZ
「だが・・・仕方がないんだ」
far
「キベンダネ」
NEZくんはドアを抜けると走り出した。
[wISH uPON tHE sTAR]
真紀の様子が気になった。
真紀はなゆさんの死体を見てから錯乱状態になった。
その前にもおかしい事があった。
まるで私を疑うような素振りを見せたのだ。
真紀の状態は簡単には説明できない心の変化があるのだろう。
無理もナイ。
これだけの恐怖を味わったのだから・・・
しかも、まだ終わらない・・・
今は真紀は両肩を抱いてうずくまっている。
私は立ち尽くす事しか出来ない。
妙だ・・・
車の音が聞こえない・・・
もうとっくにNEZくんは車を出している頃だ。
しかし、車の音は聞こえない・・・
まさか・・・神生さんがNEZくんを殺したのか?
このままではダメだ。
早くラムダくんを探して脱出しなければ・・・
しかし、真紀を放っておく事は出来ない・・・
出口のない袋小路に迷い込んだみたいに、やはり、
私は立ち尽くす事しか出来なかった。
車の音が聞こえた。
しかし、それは遠ざかって行く音ではない。
近づいてくる音だ。
NEZくんの彼女か!!
サキコさんだ!
やばい!
このままではサキコさんも危ない。
なんとかして引き帰させないと・・・
NEZくんはもう死んでしまっているかもしれないのだ!
無理にでも真紀を立たせて真紀を引きずりながら私は部屋を出た。
部屋を出た頃、車の止まる音がした。
急がないと!
真紀を背負って私は駆け出した。
悲鳴が聞こえた。
「キャーーーーーーーー」
女性の悲鳴だ。
やはりサキコさんだ!
玄関を開けるとこちらに女性が走ってきた。
その顔は恐怖に引き攣っている。
サキコ
「りょ、亮が!亮が!!」
FAR
「亮?亮とはNEZくんのことか?」
サキコさんは大きく首を縦に振る。
サキコ
「し、死んで、車の、中で、そこの、死んで、車で・・・」
サキコさんが指を指した方にはアイヤッパンさんの車があった。
運転席に人影がある。
車に近づこうとした時、ズッという音がサキコさんから聞こえた。
サキコさんは首から矢が生えていた。
サキコ
「あ、あれ?な、んだろ?」
サキコ
「こ、えあで、にうい、よ」
サキコ
「りよ、ぅわどおな、た、のよ」
サキコ
「あな、ながわー、さ、んね」
サキコ
「あじめ、あして」
そういうと大量の血を私と真紀にかけながらサキコさんは絶命した。
くっそう!
私は車に走り出した。
NEZくんの死体を確認するためではない。
今なら鍵も付いているだろうし、逃げるチャンスだからだ。
其の時、轟音と共に車は爆発した。
サキコさんが乗ってきた車も横に停めていたせいか、巻き込まれる。
これで、逃げる手段は閉ざされた。
璃音さんのお母さんを探し出して鍵を手に入れるしかない。
たとえ死んでいたとしても・・・
私が屋敷に戻ろうとした時、夜の蝶は今外にいる事に気付いた。
サキコさんをボウガンで撃ったのだから。
もう一度外を見る。
神生さんが立っていた。
ボウガンを持っている。
狙いは・・・つけていない?
車の燃える炎が神生さんを照らし出した。
額から血が流れ出している。
死んでいる・・・
そんな!
いきなり爆発した車の炎が地面を走った。
それは神生さんを包み込み更に地面を走りつづけた。
灯油を撒いてあったのだろうか?
蝶を描いた炎は神生さんの羽になった。
誰か・・・助けてくれ・・・
空を見上げると無数の星が唯一の白だった。
誰か・・・
第五部完