[a rEAL dEAD oNE]
私達はしばし呆然と立ち尽すだけだった。
少し離れてどさっと何かが倒れるような音がした。
そっちを向くとアイヤ@嫁さんが倒れている。
それほどショッキングな光景だったのだろう。
その音で我に帰った私はとにかくアイヤッパンさんの生死を
確認しなければならない事を思い立った。
FAR
「神生さん!らむだくん!後を頼みます!」
私はそう言うと走り出した。
途中でNEZくんと鼻血まみれのおみくろんくんに会う。
NEZ
「なんかあったの?」
FAR
「ちょっとまだわからない。屋根に登ってみないと・・・」
おみくろん
「なんじゃそりゃ」
しかし、NEZくんは私の真剣な表情を見て言った。
NEZ
「とにかく、2階に行こう」
私達は3人で二階に行った。
NEZ
「こっから行けるんじゃない?」
見るとベランダがある
私は二人に話もせず、急いでベランダから屋根の上に出た。
そこに死体は無かった
蝶のような紙片も吹き飛ばされて既にない。
屋根の上から庭を見下ろすと既に部屋に入ってしまったのか誰もいない。
ただ、事件の残り香は血痕という形でそれを証明していた。
リビングに戻ると皆集まっていた。
アイヤ@嫁さんも正気を取り戻したのかなゆさんに寄りそってコーヒーを啜っている。
神生
「どうだった?」
FAR
「なにも・・・・なかった」
らむだ
「だろ?やっぱりアイヤッパンさんの悪戯だって」
FAR
「そうだといいが・・・」
らむだ
「なに暗くなってんの?だいじょぶだいじょぶ。そろそろ出てくるって」
NEZ
「なにがあったの?」
らむだ
「アイヤさんが死体の格好で僕等を脅かしたんだよ」
NEZ
「趣味悪いなぁ」
おみくろん
「ほんと」
らむだ
「ま、大成功だったと言えるね」
私はどこか引っかかるものを感じていたがこんな時それを言う事は出来ない。
女性もいるのだ。
案外らむだくんもみんなを心配させないように必死なのだろう。
逆に璃音さんとお母さんの冷静さのほうが不思議だった。
璃音
「アイヤさん遅いなぁ。それまでチャットに誰かいるか行ってみない?」
NEZ
「よしいこう!」
NEZくんはテレビの横のパソコンを起動させた。
NEZ
「えっと、ヒラニヤガルバは・・・」
画面はいつものアイヤさんのTOPページではなかった。
黒い背景に赤い文字でこう書かれていた。
オフ会メンバーへ
蝶になりたい
蝶になりたい
死体に群らがる蝶になりたい
屍肉を溶かす蝶になりたい
養分をとり蝶になりたい
最後に遠くへ行くために蝶になりたい
最後に遠くへ行くまで養分を取りつづけ蝶になりたい
最後に遠くへ行くまではさなぎ
血の斑紋を得て私は蝶になりたい
夜の蝶より
璃音
「アイヤさん、凝りすぎ〜」
ラムダ
「やっぱ、ちょい趣味悪いかも」
これでアイヤさんの悪戯である事がはっきりした。
NEZ
「気が抜けたわ」
しかし、私はまた違和感を覚えた。
最後に遠くへ行く?
この文はおかしい。
最後に遠くへ行くなんて文はおかしい。
まあ、アイヤさんはこの手の手法が好きだから・・・
NEZ
「オレ、風呂入って来るわ。」
おみくろん
「ボクも行きます」
二人は風呂に行く。
他のメンバーはチャットをしていた。
どうやらペルソナさんが来ているみたいだ。
ペル>オレも行きたかったな〜
オフ>彼女が遠出できないから仕方ないよ
ペル>盛り上がってる?
オフ>アイヤさんのたくらみで盛り下がってたトコ
ペル>なんじゃそりゃ
オフ>まあイイジャン
ペル>楽しそうだな〜電話してイイ?
オフ>いいよ〜
ペル>じゃあ、FARさんとこにかけるよ
オフ>は〜い
オフ>かかってこないよ〜
ペル>圏外だ
オフ>よくあることです
ペル>よくあることです
其の時だった
NEZくんが走りこんできた
NEZ
「FARさん!神生さん!ちょっと来て!!」
私は予感めいた物があった。
それは、時間の経過に比例して大きくなっていた。
一同がざわめき立つ中、私と神生さんはNEZくんに続いて走り出した。
風呂場のドアを開けると完全に死体となったアイヤッパンさんがいた。
浴室全体の壁にアイヤッパンさんの血で描かれた蝶が私に語りかけた。
「サイゴニトオクヘイクワタシハハネヲモトメテイルノ」
最後に・・・遠くへ・・・
[cHAINS oF mISERY ]
FAR
「とにかく警察へ!」
NEZ
「あ、ああ」
NEZくんは1階の電話に走り出した
神生さんも携帯を取り出した
しかし、携帯は電波が届かない
神生
「やっぱりだめだ!」
私はアイヤッパンさんを見下ろした。
やはり完全に死んでいる。
ナイフで心臓を一突きだ。
しかし、なぜ?
これは完全に他殺だ。
自殺ならば血の絵は描けないし、
なにより心臓をナイフで突くような死に方を選ぶだろうか?
それよりも誰がこのような事を実現できるだろう?
この家の中に見知らぬ誰かが潜んでいるのか?
もしくは私達の内の誰かが・・・
いや、そんなはずはない。
犯行可能な人間は私達の中にはいない。
屋根の上にあった死体を風呂場に運ぶのはどう考えたって無理がある。
もしも、庭にいた人が残っていたら見られてしまうわけだから。
ん?
あの場所にはNEZくんとおみくろんくんは居なかった。
二人なら或いは・・・
いや、そんなわけがない
このような血の蝶を書く暇なんかあるわけがない
それに、鼻血まみれのおみくろんくんはともかく、
NEZくんは血の一滴もついていない
一人で死体を運ぶのは無理だ
そういえば・・・
私は不思議な疑問を思いついた。
廊下に血が付いていない。
一体どうやってここまで運んだのだろう?
もう一つ・・・
なぜココに運ばなければなかったのか?
いくら考えても答えは出ない。
一番怪しいのは正直言ってNEZくんとおみくろんくんだが・・・
なにを言ってるんだ!貴之!
友達を疑うのか?
そもそもここにいるみんなにアイヤさんを殺す動機などあるわけがないじゃないか!
そうだ。
これは部外者の犯行だ!
そうに違いない!
しかし、疑問はもう一人の私となって私に問い掛けてきた
far
「ホントニソウオモウノカ?」
FAR
「当たり前だ!」
far
「ナラバあいやっぱんノほーむぺーじノめっせーじハナンダ?」
FAR
「・・・・」
far
「アレハあいやっぱんシカヘンコウデキナイハズダ」
FAR
「それがどうした?」
far
「シカシあいやっぱんハヒガイシャニナッタ」
FAR
「・・・なにが言いたい?」
far
「トイウコトハハンニンハあいやっぱんノぱすーわーどヲシッテイルコトニナル」
FAR
「・・・」
far
「ミウチノハンコウトオモッテイルンダロ?」
FAR
「・・・」
far
「ソレナラバドウキモアルカモシレナイ」
FAR
「・・・」
far
「あいやあっとヨメサンカナユサンガハンニンダ。ヨカッタナバンジカイケツダ!」
FAR
「・・・さい・・」
far
「オマエモワカッテイルンダロ?モシチガウナラ
ぱすわーどヲシッテイルヤツガホカニイルッテユウノカ?」
FAR
「うるさい!だまれ!」
思わず私は声に出していった。
私は、NEZくんやおみくろんくんやアイヤ@嫁さんやなゆさんを信じている。
四人とも犯行は不可能だ
というよりオフ会メンバーは全員不可能だ
それならば部外者の犯行と考えるしかない。
しかし心の底では確信に近い物があった
犯人はオフ会メンバーにいるという気持ちが確実にあった
いろんな違和感がそれを裏づけしている
はっ!
そういえば!
おみくろんくんは?
たしか、NEZくんと一緒だったはずだ!
一体何処へ?
私は1階に駆け下りた
NEZくんが電話をしている
NEZ
「ちくしょう!電話線が切れてやがる!」
FAR
「おみくろんくんは何処へいった?」
NEZ
「そういえば、風呂場にいってから飛び出してきたからなぁ」
FAR
「探そう!」
NEZ
「ああ!」
私はなんとなく外に出た。
NEZくんは一旦リビングに戻って行ったようだ。
私は庭に出た
ここでアイヤさんが殺されたなんて信じられない
私は一番アイヤさんに会いたかった
いろんな悩みや葛藤や苦しみや幸せを聞いてもらいたかった
しかし、アイヤさんはもういない
こんな時アイヤさんならどうするだろう?
一番頼りにしていた人だった
一番逢いたかった人だった
私はアイヤさんが死んでいた屋根の上を見上げた。
そこには血で描かれた蝶の羽の真ん中で
仰向けに月を睨みつづけているおみくろんくんが居た
永遠に閉じる事のない瞳を見開いて・・・
第二部完